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娘が中3の時に書いた感想文です。ミーハーなTV番組ばかり
見てると思ったら、たまには本も読んでいるようです。



   「こころ」その作品に触れたとき
        三年B組 E. Uda

    なんとなく立ち寄った書店で、何となく手にとった本。
  私とこの作品との出会いは、そんなところです。
  ただ、「これを読んでみたい」という気持ちを起こしたのは、
  「こころ」という題名であったこと、またそれが平仮名で
  表されていたことへの好奇心の働きがあったからだと思います。
 
    夏目漱石。
  彼の作品は、「坊ちゃん」と「吾輩は猫である」
  (これは途中でページをとじたままだけど)
  この二つを読んだことがありました。
  でも、私は宮沢賢治が大好きで、彼の作品ばかり手を
  伸ばしていたので、夏目文学とは随分ご無沙汰していました。


                      ■

    「こころ」の”先生”という主人公は、過去に、親友を裏切って、恋人を得ました。
  ところが、親友が自殺してしまい、罪悪感を背負って生きていたのです。
  この作品の前半、”先生”は鎌倉の海岸で出会った学生の眼から間接的に描かれています。
  

    後半は、学生に対して「遺書」という形で過去の悲劇を”先生”自身による告白であり、
  この対照的な表現に、どことなく新鮮さを覚えました。

    「遺書という形の告白」
  そう、先生は最後、自ら死を選択したのです。
  私はこの終わり方に納得することはできません。
  親友を裏切ってしまった、そのことが原因で親友が自殺した、だから自分も自殺する、
  そんな事をして何になるのか。
 
    遺書の中で、先生は最後まで妻のことを心配して気遣っていました。
  でも、どうして妻の気持ちを考えてやらないのだろうと思いました。
  だって先生が死んでしまったら妻は悲しくて仕方ないはずです。
  少なくとも私が同じ立場なら、そう思うからです。
 
    妻は何も知らないのです。だから私だったら自殺なんてしません。
  死んでしまった親友の分まで、命ある限り妻を守り抜くのです。 
  一日一日を、そして、命を大事に、その罪を少しでも償うのです。
  それが先生の本当のやるべき事だったと思います。 
                     
                      ■

    今の時代、いじめを苦にして自殺してしまう中、高校生が増えています。
  私は先生の自殺が、そんなニュースを聞いたときの悲しみと重なり、
  とても切ない気持ちになりました。
  
    だからこそ、死んではいけなかった、死ぬべきではなかったと思ったのでしょう。
  自殺という最後を認めたくなかったのでしょう。

    私は「こころ」を何度も読み返しました。
  読むたびに、その小説のもつ意味の深さに引き込まれ、初めはあんなに強く「死」を
  否定していたのに、本当はどうすることが一番正しかったのだろうと、
  考えを見失ってしまいました。とにかく、もう一度読んでみよう、もっと考えてみよう、
  それがその時の私の精一杯の答でした。

    先生の選んだ道がどうだったかは、とりあえず問題から外してみると、
  また違った面が見えてきます。きっとここが夏目文学の面白い点であり、
  よい点なのでしょう。そんな気がします。

                     
                      ■

    別の面というか、私の気にかかったことは、小説の中で、あまり気にかけることのない
  細かい部分まで、漱石はしっかりと描き上げていることです。

    先生と親友の下宿先の家屋の間取りなどは、ごく普通の家と変わらないように思います。

    先生と親友の部屋の境はふすま一枚であること。
  奥さんのいる茶の間が中心であること。きわめつけは、もともとそこは軍人の夫を亡くした
  奥さんの家、軍人の遺族の家であることです。

    奥さんには一人娘があり、そこへ先生と親友が住み込めば、
  三角関係が生じるのは無理もないでしょう。後で著者紹介を読んで知ったのですが、
  漱石は若い頃、建築家になろうとしていたそうです。

    あと、印象に残ったところは、先生は月に一度親友の墓参りをしていましたが、
  その墓は、雑司ヶ谷霊園にありました。そして漱石自身の墓も、そこにあるそうです。
  著者と登場人物の関係の深さを改めて感じました。

    小説の後半で、先生は遺書に

  「私は今自分で自分の心臓を破って、その血をあなたの顔に浴びせかけようとしているのです。
  私の鼓動が停まった時、あなたの胸に新しい命が宿ることができるなら満足です。」

    と書きました。
  初めに現れた死を選ぶ事への疑問が、なんだかはね返された気分でした。

    明治をとらえたこの作品に触れて、エゴイズムの追求と
  批判を目の当たりにしました。
  そして、人の心について、愛について、命の大切さ、
  重さを深く考えさせられました。

    今を生きる私にとって、どんな苦しいことがあっても、
  自殺なんて選ぶことはできません。
  周りの人を、そして自分を大切にしたいと思うから。
  真実と向き合う心をもって、社会に立ち向かっていきたい。
  自分の心をゆっくりと、時間をかけて育てていこうと思います。


        ※ 私の娘は2年半ほどにわたるいじめを切り抜け、
          それなりのバイタリティーを得たようです。 ほっとしました。
        

 

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