30 On Training Reports


  #12
KENさんの場合
  
 KEN さんは関西在住の大学4年生。

 「大学に入ってからは語学としてはフランス語専攻で、英語は
 読みたくなったときに読むといった程度です。が、この時代、
 英語が必要だとはやはり感じています。」

 特に習得したいのは共鳴音です。どう出すのかが、理屈とし
 ては簡単なのですが、実際にやってみるとよく分からないとい
 う感じです。

 この共鳴音というものについて語られたものなど、フランス語
 関連に関してはなく、これを何とか習得する、もしくは理解の
 きっかけにまでに至れればと思っているのです。」
 
 ということでトレーニングとなりました。



 30音トレーニング 体験レポート

 私の英語歴

 …といっても、私には人に語れるほどの英語歴はほとんどあり
 ません。中学、高校では英語が得意科目で、偏差値が人より
 は多少よかったというくらいのものでした。

 高校時代も、ヒアリングはNHK英会話を聞くなど人並みのこと
 はやっていましたが、受験大学の(今にして思えば悪しき)問題
 形式――和訳、英作のみ――に特化して学習を進めたため、
 その方面では多少の進歩がありましたが、音声に関してはほ
 ぼ止まってしまいました。

 大学入学後は第1外国語がフランス語なので、英語は教養の
 語学の授業で履修するだけ。すでに1年間近く、気が向いたと
 きに英語の本を読んでみるに過ぎないという状態が続いてい
 ます(イギリスの児童文学とアメリカのフィッツジェラルドが気に
 入っていた時期があった)。


  受講目的

 私の受講目的は少し変わっていて、先に書きましたように専
 攻外国語はフランス語です。ですが、何か外国語を聞いて真
 似しようと試みたことがある人なら誰にでも分かると思うので
 すが、英語に限らず外国語もつあの声の深みは、ほぼどの
 言語の学習にも共通して日本人に立ちはだかる壁です。

 そして、あの外国語の響き――共鳴音(特に鼻音)――につい
 て言及しているものは、私の知る限り Uda先生の30音トレー
 ニングしかありません。よって、このトレーニングでは共鳴音
 を習得することが当面の目標でした。共鳴音を習得してそれ
 をフランス語にも適用しようと思ったわけです。


 トレーニングの経過

 本当に色々なことを言われましたので、全部を書き出したら
 切りがありません。大体のことはもうすでに、他の方のレポ
 ートでさんざん書き尽くされていますので、特に印象的だった
 ことに留めます。

 1.声の表情

 私について評した言葉は、「声の表情が暗い」ということでした。
 同様に、声が小さい、緊張し過ぎている、というようなことも繰り
 返し言われました。このままではおよそ発音トレーニングも何も
 あったものではないとのことでした。

 欧米人のように明るい表情を作ってにこやかに話すということ
 を、どちらかといえば精神論的事柄で、発音の学習というより
 は世渡りの一環(?)であって、発音とはそれほど関係ないもの
 と思い込んで、私はまったくこの点を軽んじていました。

 はじめの1時間ほどは、ともかく少しでも明るく声を出すことや
 緊張をほぐすといったことに費やされました。なかなか具体的
 な修正に入らなかったので、はじめは「修正し切れないほどに
 ひどかったのかな?」などと心配してしまいましたが、それはた
 だの杞憂でした。

 やはり英語を喋るにあたっては、ある程度の声量と、声の表情
 がなければ英語らしい響きにはなかなかならない、ということが
 よく分かったからです。

 英語というものは概ね、ある程度の声量と声の表情の明るさ
 を伴って喋られる言語とのことでした。その2要素は英語とい
 う言語自体の要素にさえ昇華しているいってよいでしょう。
       
  

 これほどまでにメンタルな要素を言って聞かせた受講生は、こ
 れまでにいたのですかと尋ねたところ、「男では君がはじめて」
 とのことでしたので、大体の人は上のことを頭の片隅にでも置
 いておいて練習に励めば十分ではないかと思います。

 このときに指導されたことを書いておくと、
 「眉を上げたりしながら話す」(声の表情の調整)、
 「背筋を伸ばして、肩が少しでも上がっていたら力が入ってい
 るので脱力する」(発声の調整、緊張の自覚ないし解消)
 などといったことです。このことは絶えず注意されました。


 2.聞き真似

 もう一つ印象に残ったことは、とにかくよく聞いて真似ないこと
 には上手くはならないということでした。このことは多くのレポー
 トで何度も取り上げられていることですが、本当にこれが難しい
 のです。

 DVDを見て母音・子音の出し方や、子音を強く出すこと、などな
 どの大雑把な原則を与えられるわけですが、その原則をあまり
 に言葉通りに受け止めて、例えばわたしの場合ですと、place
 という単語で、子音を強くするという原則を頑なに守って、お手
 本をよく聞かない結果、p の破裂が強すぎて p と l の間に間が
 できてしまうということなどがありました。

 In that case, you shouldn't beat his dog. の場合、that と beat
 の t は、省略するのでもなく弾きすぎるのでもなく、t の位置に
 軽く舌を当てるだけなのです。そうしたことは基本的によく聞くし
 かなく、同じ t でも異なって発音されることがあるとをおっしゃっ
 ていました。ともかく、理屈が先行するとそうした違いをありのま
 まに聞き取れなくなります。真似るにあたっては大枠としてのイ
 ントネーションからまず整え、それからその中身である個々の
 発音を調整していくという順序でいけば、上のような過ちを犯さ
 ずに済むとのことでした。

 終わりに

 具体的トレーニング例は、以前の方たちのレポートにほぼ漏
 れなく出ています。ですから、ここではむしろ、月並みではあり
 ますが「木を見て森を見ず」ということを少しでも避けられるよう
 な枠組み的な事柄について報告させてもらうことにしました。
 (「森を見ず」状態に陥っている人が非常に多いとのことです。)

 私自身は劇的に上達したというグループではありませんが、こ
 れから何に注意して聞けばいいか、何を行えばいいかというこ
 とについて、大きな指針はいただけたと思っています。

  蛇足

 夜行バスに揺られて約8時間、列車に揺られて約2時間半。
 関西から出てきてなかなかの長旅でしたが、十分過ぎるくらい
 元は取れたと思っています。先生は次から次へと、英語のこと
 に限らず、それでいて深いところでは英語とつながりがあるお
 もしろいことを色々、話してくださいました。

                    *

 あれこれ至れりつくせりで、本当にありがとうございました。
 返事といえばいつも「はい」ばかりで、本当に申し訳ありませ
 んでした。それが少し心残りです。

 My ひとこと

    KENさんは長旅の疲れも見せず元気な反面、緊張でガチガチ。
    格闘でもしているかのように身構え、力んでいる。課題文を録音
    してもガチガチ。個々の音を忠実に発音しようとしているが、力が
    入りすぎ、音と音の間に無用な音が入る。
    
    こういうときには、リラックスする練習から入るのが効果的です。
    ほぐれてくると、基本をふまえた方の場合、微調整をすればOK、
    となるからです。
    
    専門はフランス語と言いながら、アメリカ文学も読むというKEN
    さん、今後が楽しみです。


      
  
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