私のアメリカ体験記
 
カタカナ英語とカリフォルニアの青い

Part 2

 あこがれのロス空港で       


 ロスアンゼルスに着いてすぐのことです。税関で、係員が
何を言っているのかさっぱりわからないうえに、何を言っても
通じなくて、いきなりパニック。 ボーゼン自失でありました。

 Passport を出すように言われたことは見当がついたの
で、「ちょっと待って」と胸を張り

 Wait a minute, please.

 と言ったところ通じない。何度くり返してもダメ。
これには驚きました。  
         
 「アメリカの税関の人は英語がわからない?!」  
本当にそう思いました。                  


 ロス空港を出て、でタクシーの中です。運転手に行き先を
告げるが、通じない。ホテルの住所を書いたメモを出そうとし
て、先ほどの
 
 Wait a minute, please.
(ちょっと待って)

 を言ってみたが、またも通じない。運転手は何かを言って
くるが、"OK"くらいしか聞き取れない。   



 どうして誰も、簡単な英語がわからないのか見当もつかな
い。
                           
 「自分は本当にアメリカにいるのか?
 
 「アメリカ人は英語がわからないのか?
 
 一人でホームステイを体験した人は、この心境をわかって
くれるかも知れません。妙に不安になるものです。 

 学校の先生の英語はしっかり聞き取れたのに、アメリカ人
の英語が聞き取れない。英会話の本で覚えた状況はあって
も、中身が違う。 話が違う。 何がなんだかわからない。
徹頭徹尾、わからない。 


               


 そのわからなさが納得できずに、何度かアメリカ人に向か
って

  Please speak English.

 と言ったことを覚えています。 カタコトながら、使えるものと
信じていた私の英語はまるでダメ。聞いてもダメ、言ってもダ
メ。到着直後から目の前マックラ・・・

 私は孤独な日々を過ごすことになりました。   
   


 

アメリカにいても上達しない


 暮らし始めて痛感したのですが、アメリカにいるからといっ
て、自動的に英語が上手くなるなんてことはありません。

 24時間、英語にあふれる国にいながら、まったくどうになり
ません。それは日本で、アメリカ映画を何本見ても、ただ見て
いるだけでは英語は上達しないことと同じです。    

 聞き取れない、通じない。話し相手がいない。       
どうにもならないもどかしさ。                


 この頃で印象に残っているのは、こちらがわからなくても
平気でペラペラまくし立てるアメリカ人が多いこと。ロスには
メキシコ系の人たちも多くいましたが、彼らもそうでした。 

 英語かスペイン語かの区別もつかないというのに、目もく
らむようなナチュラルスピードで話しかけてくる。相手の理
解のしかたを見て手加減して話す、という日本人的な発想
はほとんどないようでした。                  


 聞き取れないから、ろくな返事ができない。言っても通じな
い。文字通り、お互い、「話にならない」。それでも、ひとしきり
何かを言いまくり、やがて                     

  Have a good day.

 くらいでピリオッド。そんな感じです。とても英会話どころで
はありませんでした。    

水が飲めない


 日本にいると「発音がうまい・へた」程度のことですみます
が、hamburger が通じないとなると、死活問題になります。
のどがかわいても「ウオーター」では水も飲めません。秘かに
期待していた、金髪の美女と親しくなるどころではありません。
 
                     

 見ザル・聞かザル・言わザル状態では近づきようもなく、
通じる発音を身につけることが最優先課題であり、生存を賭
けて見えない敵と戦うような気持ちになります。       

 


シーツが買えない


 家具付きのアパートをなんとか借りた直後のことです。
シーツやタオルは自前、ということで寝具店にシーツを買い
に行ったのですが「ない」と断られました。何軒か回っても、
「ない」と言うのです。
  
 「シーツが欲しければボックスオフィスに行け」と言われた
こともありした。box office って、映画やコンサートのチケ
ットを売っている場所でしょう?  
  

          


 言い方もいろいろ試しました。

 May I buy sheets?
 あれ、通じない。 

 Do you have sheets?
 やっと通じると「ない」と答が来る。

 そこで、一枚だけでいいからと a をつけて、

 Do you have a sheet?

 ..... 通じない。


 もっとていねいに
  Would you sell me a sheet, please?

 これでもか、これでもかと、何度もくり返す。
 それでもダメ。  


             


 問題は言い方のせいではありませんでした。どこでも
即座に「ない」と、断るからです。寝具屋に「ないはずは
ない」のに、と不審に思っているうちに疑心暗鬼になり、
これが人種差別というものかと、真剣に考え込んだも
のです。  

 最後に行った店では工夫して、  

Do you have s-h-e-e-t?

と、スペルを言い、ようやく買うことができました。

 私の「シーツ」は seats(座席)のように聞こえていた
のでした。 sheet を買う場合には sh をうんと強く発音
しないと通じないのです。     

 日本にいれば、誰もが状況から sheet seat は判
断してくれます。ところが、日本人の発音に慣れていない
ネイティブにはまったく別の単語なので、ほとんど理解し
てもらえません。   

 しかも、それはホンの始まりで、その後も、   
カンタンな英語が通じない状態」が何年も続くのでし
た。
 

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