「英語のスペルほど不規則でやっかいなモノはない」、といわれていますが、 実は、スペルの80パーセント以上が規則的です。その規則性はシンプルなものです。 それらを覚えると、スペルの読み書きに役立ちます。 ポイント: ・意味と発音を表すスペルは、単語としての見た目、わかりやすさが必要。 ・ひらがなの場合、10の音を表すためには10の文字を使用する。 英語の母音は10種類以上もあるが、母音を表す文字は a e i o u の5つだけ。 10以上の音を5つの文字でどう書き表すか? それが問題です。 スペルは1文字ずつ 英語のスペルは発音を表しているので、一文字ずつ読むことが原則です。 スペル 発 音 (1) cap → c - a - p (キャップ) (2) angel → a - n - g - e - l (エンジェル/エンゼル) 語尾の e ご存じのように、語尾のeは発音しません。 スペルは「発音を表している」のに、発音しないeがついている理由は何でしょう? 次の単語で a の発音を比べてください。 cap, cape tap, tape e が あれば 、なければ と短く発音します。 発音しないe を使うことにより、aが2通りの発音を表すことが可能となりました。 次の単語も同様に、母音をアルファベット通りに発音するか、短く発音するかは 語尾にeがあるかないかで区別します。 pin, pine cop, cope つまり、 語尾のeは、単に「発音しない」というオマケの文字ではありません。 母音の発音方法を示すという重要な働きを持ち、それは、同じ文字で、 異なる発音を表記するための画期的な工夫であったのです。 黙字の働きとバリエーション 語尾のe の他に、know の k、 receipt の p などの発音しない文字を黙字(もくじ) といいます。黙字は古くは発音したとか、借用語でもとの言語の表記に倣ったもの など、いろいろありますが、ここでは現在のスペルで考えてみましょう。 前述の語尾のe。これは、どうせ発音しないのだから、別に単語の最後でなくても いいではないか。ちょっと、前に移動してみよう。ひょっとしたら、そんな考えで meet seet などのスペルが作られたのかも知れません。 スペルの誕生は6世紀頃なので、今となっては、あまり定かではありません。 とにかく、連続した文字に注目してください。 meet seet の2つめのeは、語尾のeを移動した黙字と考えられます。 すると、直前の母音をアルファベット通りに「イー」と発音する、という原則に当ては まります。(eがなければ met, set と短く発音する) 次に、どうせ黙字は発音しないのだから、eを別のものに置き換えてみよう。 いつも同じでは退屈だから、ということでもないでしょうが、まぁ、変えてみた のです。 meat seat すると、どうです。 同じ発音で、意味の異なる単語も書き表せるではありませんか。 目で見て、しっかり区別できます。 「お、これはいける」、と思ったことでしょう。 うまくいくとノッテくるのが人情。次々に工夫を凝らすものです。 rain boat 後ろの母音は発音しない合図の文字だから、i や a を活用するのは当然です。 だからといって、raon, boit と綴ると、とても読みにくくなります。やはり rain, boat の方がしっくりすることが分かります。 次に、母音だけでは味気ないから、g などの読みにくい文字も使ってしまおう。 sign night knight 黙字を子音に変えてみた、というわけです。 ※昔は knight の k も gh も発音したという説がありますが、定かではない ので、現在のスペルと発音で考えてください。 子音が連続した場合は後述します。 細かいことは他にもいろいろありますが、ひとまずここで ルールをまとめておきましょう。 母音が連続した場合 母音が連続していたら、前の母音だけを アルファベット読みする。 2つめの母音は黙字。 meet meat rain boat ※ 後ろの母音を発音するのは、わずかな例外だけ。どの母音を発音しているかに注目!! you beautiful great soup piece 子音が連続した場合 同じような子音が連続していたら、直前の母音を短く発音する。 後ろの子音は黙字。感覚的には、日本語のはねる音、「っ」に似ている。 back 発音は bac だが、back の方が見た目がよく、分かりやすい。 apple p が連続しているので aを短く発音する。 例:approach, application, appreciate p が1つの場合には aをアルファベット読みする。 例:ape, April, apron, apricot ------------------------------------------------------------------------------- 例外について スペルは見た目が大事! (1)子音の3連続 apple の最後は e ですが、これは見た目重視のため、と推測されます。 appl と子音が3つ並ぶと、見た目が悪い。 そこで子音が3つ並んだ場合には、最後にe をつけて、しっくりさせる。 bottle castle なども同様です。 (2) 語尾のe の例外 some, come, love など、o を と狭い音で短く発音する場合には 語尾にe を付けます。これはbox , などの「開く音」と違いを 見て分かるようにするためです。 love は、もともとは luv と書いたのですが、筆記体の uv は読み にくいので ov に換えたそうです。そして、u の発音を表すために、 語尾にeを付けた、と考えられます。 ------------------------------------------------------------------------------- こう活用する スペルの丸暗記から解放! 「アプリケーション」と聞こえたら、「ア」と短いので、次の p は2つ重ねる。 application 「エイプリカット」と聞こえたら、 「エイ」とアルファベット読みをしているので次の p は1つだけ。 apricot この要領でスペルの原則を活用すると、とても役に立ちます。 知らない単語の読み方の見当をつけたり、知らない単語を聞き、書く場合に 母音が長いか、短いかを考えればいいからです。 ちょっとひとこと 上記は私がアメリカ留学中に発見した推測に基づく規則です。 「大母音推移」説にはあてはまりませんが、現代のスペルには当てはまります。 スペルが複雑に思えるのは、日常よく使われる約400語、中学校で習う some や have などが不規則なこと、ギリシャ語やフランス語など他言語からの借入語が例外になっ ているためです。 「大多数の原則と、少しの原則外」を1セットとして考えると、整理がつきます。 少数の例外にまどわされず、規則性を大いに活用しましょう。 ※「大母音推移」説に関してはまたの機会に。