>トップページ >30音 メディア >1999
スピーキング − UDA式
For CNN English Express Dec, 99
Suda Seiya

   ほんもののスピーキングへの基礎

日本人は英語を読むことは、ある程度できる。
しかし、聞き取れないし、話せない。
特に話すことのできなさかげんは重症だ --- と、まあ、このあたりが定説
でしょう。

スピーキングに関しては、英語を日常使用していない国に住んでいるわけ
ですから、力を伸ばすのがなかなか難しい状況にあります。

スピーキングの学習の基礎としては、あいさつの表現を覚えたり、とっさに
一言が言えるように状況別の決まり文句を覚えたり、朗読したり、何でも
いいからひとりで実況中継したり、口に出して言ってみたりして、とにかく
英語を話すようにすることがたいせつでしょう。

ただし、そのときに、
覚えたり口で言ったりする英語が日本語的な英語のままでは、いつまで
たっても上達しません。そこで今回は、スピーキングの基礎レベルに到達
する以前の段階を扱ったもの、発音の基礎の基礎を扱ったスピーキング
学習法―「UDA式 30音でマスターする英会話」をご紹介します。

<中略>

UDA式は、発音の基礎から入る学習法として、
『英語スピーキング科学的上達法』(講談社刊)などと同じような考え方を
とっています。スピーキング・リスニング上達にとって、大きなネックになっ
ているのが「音」であるという考え方です。

この音とは、音声のことですが、分析的に細かく、正確に英語の音声を
とらえ、そこからスピーキングに入っていくべきだとする姿勢を込めて、
あえて「音」と表現しているのでしょう。


  ■ UDA式の考え方

UDA式の考え方の基本は、「カタカナ英語から使える英語へ」ということです。

「カタカナ英語」とは、ふつうの日本人が話す、日本語訛りの英語のことです。
カタカナ英語を話す人は、ご存知のように身の回りにたくさんいます。
カタカナ英語は日本において猛威を振るっています。この状況について鵜田
さんは、次のように語っています。

「日本人にとってカタカナ英語は、ネイティブの英語よりもわかりやすく、とっつ
きやすい。それは、それなりに役には立つ。しかし、そのことが、さまざまな
弊害や誤解を生み出してきたのである」

確かに、日本語訛りの英語は日本国内で通じやすく、話しやすいですから、
そのかぎりでは便利で役に立ちます。しかし、その反面、ほんものの英語を
話す人には通じにくいですし、カタカナ英語を話していると、ほんものの英語
を聞き取ることができなくなるということも納得できます。

カタカナ英語を脱して、ほんものの英語の音を身につければ、使える英語へ
向かうための基礎体力がつき、スピーキングやリスニングの学習のスピード
アップがはかれるはずです。それは誰しもわかっていることでしょう。    

しかし、UDA式 のすぐれている点は、誰もがわかっていながら脱却する道が
わからないでいるポイントのところに切りこんだ点です。中でも特に重要な点
が 2 つあります。

1つは、英語のスペルは発音を表しているという見方です。
もう 1つは、英語の発音のし方をかつてなく正確に教えてくれることです。


   UDA式のポイント

● 30音 トレーニング(表略)
  子音 25音
  母音 開く音と狭い音の5つ

UDA式の 30 音とは、以上の音のことを言います。

英語の音は、たとえば [ou] など、ほかにもありますが、実用的には 30音を
覚えれば十分とされています。表からわかるとおり、子音はスペルと対応
させて覚えます。

母音はスペルと発音の間に対応がかなり見られるものの、子音ほどの対応
はないので、発音記号のみによって示されています。母音の「開く音」という
のは、固定した 1 音でなく、連続して変化する音のことです。
それに対して「狭い音」というのは、連続的変化のない音のことです。
     
UDA式 30音トレーニングの第 1 段階は、アルファベットのうちの子音の「音」
の練習です。 b, c, d, f, g... と、「アルファベットの読み方」ではなく、
「スペルに対応した音」の発音をまねていきます。

c は [s] と [k] の音があります。
g も [dз] と [g] の 2 音があります。

ひけつは「パワーとスピード」だそうです。
息を日本語の 3 倍の速さで出せとのことです。
それだけダイナミックな発音をします。

1つ 1つの音の出し方は、たとえば
h [h] なら、「息がノドを通るときの音。ノドは少しせばめる。
寒いときに、こごえる手に息を吹きかけるように強く息を出す」のように、
コツが指示されます。

30音トレーニングの第 2 段階は母音です。
日本語の口の形では発音できない音を中心に、「開く音」・「狭い音」という
ような独得の用語のもとに練習を続けていきます。

たとえば、[ae] については、「口は『エ』の形で、舌の奥を高くする。
舌の先で下あごをイッキに押し下げて,鋭く発音する。前歯は『ア』よりも
小指一本分くらい開く。『ア』のように一つの音ではなく変化する音」と説明
されていますが、かなりわかりやすい説明と思われます。



●スペル・音・口の形

「英語は表音文字であり、文字は発音を表したもの。スペルの 1つ 1つが、
それぞれの発音を表している。次のようにスペルを 1音ずつ正しい発音で
読んでいれば、あなたの英語は通じるし,相手の言葉は聞こえてくる」

これは本の中からの引用ですがに、なんという力強い励ましなのでしょう!

f は tough の gh の音、i は women の o の音、sh は nation の ti の音
だからして、fish は ghoti ともつづれる、英語のスペルはでたらめだと怒り
まくったのは、かの G. B. S.、ジョージ・バーナード・ショーです。
その G. B. S. に対しての真っ向からの反論とも受け取れる言葉です。
英語のスペルは発音を表しているのです。スペル 1 つ 1 つが英語の 1音
ずつに対応しているのです。

たとえば、Tokyo という地名ですが、外国人は T-o-k-y-o と 1文字 1文字
発音するのだということが UDA式の本の中で指摘されています。
このように発音すれば Tokyo の英語読みが得られるわけです。

こういった、スペルと発音の関連へのこだわりから、UDA式の第2 のトレー
ニング方式が出てきます。30音の練習から一歩進むと、スペルを見たら音
が出せて、口の形も決めることができるようにするためのトレーニングへと
移ります。

このトレーニングでは、たとえば

c, s ⇒ cas ⇒ case

のように、 c と s の発音に始まり、次に間に a を入れた cas の発音をし、
最終的に case という語の発音にいたる、という練習をまず行います。
この練習の意味は、c と s の子音個々の音を出し、間に母音 a を入れた
ときにどのような連続音にすればよいかを知り、さらに、単語としてはどの
ようなスペルになるのかを知る、ということです。

手が込んでいますが、個々の子音の発音は 30音の復習的な練習、子音と
母音の組み合わせは発展的練習、case というスペルを知ることは、スペルと
音の関係の知識を得るためであり、UDA式のポリシーに沿っているわけです。
     

cas という中間の形態は、奇異に感じられるかもしれませんが、これは
e が黙字であることを意識させるために置かれているものと思われます。

黙字は発音されない文字という意味ですが、case などの最後の e は、前に
ある母音を 2 重母音( [ou]・[au] など、母音が重なっているもの)か長母音
( [i:] などの長音) として発音しなさいという指令を発する役目を担っています。
最後に e があるために、case の a が [ei] という発音になるのです。
     

このことにうすうす気づいていた人は多いと思いますが、UDA式のシステム
の中では、さらに重い意味を担うように位置付けられています。そこには、
スペルと音は対応しているという規則性の認識があります。

もちろん例外はありますが、それは短い単語、つまり古来からある英語や、
フランス語から借り入れた英語です。


   試してみました

[ae] の発音法は一般に、「エの口の形でアと言う」というような認識の仕方が
なされていると思いますが、UDA 式では下アゴの使い方がポイントになります。

「エ→ア」という連続音の最後のところで、アゴを一気に押し下げることがコツです。

実際に試してみると、奇妙な動物じみた音が出ます。
こんな音でいいのかと思いながらも、同じ音を用いて sat, fat, rat などと発音し
てみると、なんと、まるでネイティブの発音のように聞こえました。大成功です。
     
[ae] は単一の音ではなく、「エ⇒ア⇒あご下げ」の連続音なのですね。

また、me についても UDA式でやりなおしてみました。
m-e と音を分解して、[m] と [i:] の 1音ずつを組み合わせて発音してみます。
特に最初の [m]音を UDA式どおりに発音すると、ついついやってきてしまって
いた「ミー」というカタカナ式発音からさよならできました。

me という語は弱く言われることが多く、リスニングにおいて聞き取れないことも
あったのですが、その弱い発音の me が、はっきりと聞き取れるようになったの
は、また別の収穫でした。

30音の練習が済むと、確かに英語の音声感覚が身につき、カタカナ的感覚が取
り除かれてきたように感じられました。


■学習のしかた

UDA式は鵜田さんの塾や書籍、ビデオなどで学ぶことができますが、インター
ネットのホームページでも基本的な部分が紹介されています。
このホームページはなかなか内容の濃いものになっています。書籍よりも丁寧
なのではと思われるくらい、発音についての説明を受けることができます。
     

FAQや、30音トレーニングを直接行った人たちの感想、30音ビデオの感想など、
さまざまな周辺的な情報もあります。


   まとめ

今回は UDA式のエッセンスをご紹介しました。英語公用語論などはいき過ぎた
主張と思われますが、カタカナ英語が日本からなくなれば、それだけでも日本の
英語の状況が飛躍的に打開されるのではないかと思われます。
UDA式は、日本英語への提言として、大いに意味ある方式と思われます。
     
 
■データ

『UDA式30音でマスターする英会話』 鵜田豊著
SS コミュニケーションズ刊、
定価2500円、オーディオCD付き


   筆者紹介

ライター:須田誠也 (suda seiya)
      seiya.suda@nifty.ne.jp
      http://homepage2.nifty.com/seiya-suda/
      めるまが『英語☆クールな名言』他

    << 戻る
                                   ページのトップへ
Copyright (C)  2007 Yutaka UDA. All rights reserved.
著作物の無断掲載、転載を禁じます。