Miki さんの30音トレーニング・体験レポート

【はじめに】

 

私は、職場において時折英語を使用しており、またTOEFLで高得点を狙っていることもあって、

この1年ほど自分なりに英語の聞き取り能力の向上に力を入れているつもりでいた。ところが、

最近になり自然なスピードの会話の聞き取りやTOEFLListeningセクションに対し壁を感じ

始め、その原因を突き止める手段の1つとして、鵜田先生の発音トレーニングに参加させてい

ただくことにした。

 

【講義内容】

 

多少の順序の入れ替えはあるが、講義の内容は以下の通りであった。

 

1         課題文の読み上げと録音した課題文の分析

2         母音及び子音の発音練習

●開く音・狭い音

●鋭い音

●母音から子音

鼻と口に響かせる音

3         母音と子音の強弱の関係

4         高速英語と英語のリズム

5         英語らしい発音

 

1 課題文の読み上げと録音した課題文の分析

事前に課題として送付された10個の課題文を読み上げ、それらを録音。

参加者3名の読み上げが終わった時点で「ものすごいですね」という明らかに軽蔑と同情を含

んだお言葉を鵜田先生よりいただいた。その言葉を受け、私の発音が酷い状態であろうという

ことに検討がついたが、何を誤っているのかということは全く推測することが出来なかった。

この後、先生が解説を進めるつれ、自分に対して徐々に呆れていくことになる。

まずは、課題文を音声波形ソフトで表示。ネイティブスピーカーによる見本の波形と私の波形

は全く違っていたので、それだけで、前者と後者では違ったものであるということは予想でき

た。さらに文章を短く区切って自分の発音と比べることで、その二つは似ても似つかないもの

だということが判明した。つまり私はお手本を全く真似ていなかったわけで「発音がよい」と

か「悪い」とか判断できるレベルではなく、それ以前の問題であったということだ。

その後、問題のある箇所について、各々に発音の矯正を行おうとしたのだが、その過程で私た

ちが母音や子音の正しい発音を身に着けていないということが発覚し、課題文からは一度離れ

て、まずは30音の正しい発音を練習することになった。

 

2 母音及び子音の発音練習

 

 [開く音、狭い音の聞き分けと発音]

 “a[{] o[A] o[O] u[V] i[i]”の発音の聞き分けと違いについての解説と実践を行った。

鵜田先生の指導は口の形状やその変化だけではなく、音を響かせる場所まで及んだ。今ま

でそのような箇所にまで意識が及んだことはなく、日本語の概念の枠組みを取り払う必要

があるということを実感した。また、大切なことは、”a”や”o”の「音の違い」という

よりも「開く音か開かない音か」であるということを知ったのは非常な驚きであった。

 

[鋭い音]

息を早く吐き出すことで発音をする”s[s]”について集中的に練習を行った。息を吐き

出すスピードは自分が考えていたよりもかなり速いものであり(私の呼気には鋭さが欠

けていたので鵜田先生に「空腹で力が出ないのですか?」と質問をされたほどであった)、

また少ない息の量で鋭い音を出すには、それぞれに合った歯の合わせ方があるとのこと

であった。さらに、正しい発音をするには、姿勢を正し、肩の力を抜くことが肝要であ

るという御指示もいただいた。発音の勉強に際し、体勢にまで指導が及ぶとは思っても

見ないことであった。

 

[母音から子音]

母音から子音に変化する”ir[@:r or[O:r] ar[a:r] ”の発音について解説と実践。

r”の発音の口の形は、日本語には存在せずドナルドダックのように口を突き出しさ

らに横長につぶした形であるので、まずその形を作ることに苦労した。それよりも私

を悩ませたのが、前半の母音よりも、子音である”r”を強調して発音することであっ

た。日本語の発声には強弱がなく、1つの発音・単語・文章は平坦である。またどち

らかといえば語尾は尻窄まりになる傾向がある。そのため、「母音よりも子音を強調」

という概念を理解することが、この時点ではまだできていなかった。

 

[鼻と口に響かせる音]

l[l] m[m] n[n] ng[N]”の発音に集中して講義を行った。もちろん発音自体にも苦

労したが、ここでも私を悩ませたのが、「母音よりも子音を強調」という概念である。

日本語には「ん」という鼻音が存在するが、文中での発音はどちらかといえば弱

い。”l”の発音を理解するため”school”という中学校1年生レベルの単語を使っ

て練習したのだが、語尾の”l”の発音を長めにその上強めに発音しなければならな

いということが非常に難解であった。他の参加者2名がクリアしていく中、私は子音

強調の概念について自分を納得させることができずにいた。理解が足りないので、当

然そういった形で発音をすることも不可能であった。

 

3 母音と子音の強弱の関係

Excuse me, but this house has been empty.”という例文を使って、母音は弱く子音は強

くということを体現するための練習を行った。まずは、全体的に文章をささやくように発声

することで、母音と子音の差を明確にした。ここに来てようやく、「母音よりも子音を強調」

にということの意味を掴み始めた。そこで、正しい発音という意味では間違っているが、私

はやっと分かりかけた「子音を強調する」ということに神経を集中して練習を行った。こう

することで、曖昧な音というのは、音の種類という意味では定義がなく、はっきり発音すべ

き音に挟まれた中間の音であるということも同時に飲み込めてきた。

 

4 高速英語と英語のリズム

日本人からみると非常に早いスピードで話された例文を使用しリスニングを行い、その後そ
れと同じ速さでのリピーティングを行った。母音と子音の強弱の関係が分かりかけてきた私
は、同じリズムで例文を真似るということには、それほど苦労をしなかった。言い方に問題
があるかもしれないが、手を抜いて発音しても構わない音と必ず発音しなければならない音
があるということを理解しつつあったからだ。もちろん、正しい発音という意味では多いに
問題があったとは思うが、強弱をつけられるようになったということは、大きな進歩である。
リズムとして発音できるようになった時点で、
例文をもう一度聞いてみると、初回ではほと
んど聞き取れなかった例文があまりにはっきりと聞
こえるようになっていたので図らずとも
参加者3人で同時に笑い声を上げてしまった。要するに
本来なら聞こえるべきものが、何ら
かの理由により正確に聞き取れなくなっているということだ。
その主たる弊害にひとつに、
学校での英語教育が挙げられる。中学、高校、大学を通じて教えら
れてきた間違った発音
が私の中には刷り込まれてしまっているのである。”Some”という誰でも
知っていると思わ
れる単語1つをとってみても、耳を澄ませば[サム]とは発音されておらず[sm]
という子音
だけで成り立っている。こんな簡単な単語1つですらまもとに聞き取れないことに気
が付き、
愕然とさせられた。

 

5 英語らしい発音(口蓋前方と鼻に響かせる音・口の形状を変化させない音)

Important”という単語を例にとって、口蓋前方と鼻に響かせる発音を練習した。”l, m,

 n, N”に限らず、どの音においても、鼻に響かせようと意識することでグッと英語らしく聞

こえるということを、今までに練習した例文を練習しなおすことで実感。また、口の形を変

えずに発音できるものについては、口の形状を保ったまま、口の中の動きを変化させること

で発音するということを”just”という単語を使うことで学習した。顎の内側を下の歯に押

し付け、舌の奥を口蓋にあて、舌先を自由に動かせるようにしておくという英語の口の形の

基本形がこうした発声方法に繋がっているのであろうことを伺い知ることができた。

 

【おわりに】

 

今回、鵜田先生の講義を通じて、自分が何を理解していなかったのかを一部でも理解できたこ

とは、大変有益であり、この先自分がすべきことも少し見えたように思える。私のしてきたこ

とは、文章を聴きそれを自分の知っている単語に置き換えることであり、総体としていかに意

味を捉えるかということだけであったのだ。遠回りのように思えるが、正しい発音をまず身に

つけることが聞き取り能力の向上に繋がるのであろう。既に日本人的発音を身につけてしまっ

た私が、正しい発音と間違った自分の発音の違いを見抜くことは、難しいことであることは

重々承知している。だからこそ、基礎的な母音や子音の正しい発音を知ることの必要性を実感

した。非常に大きな収穫であった。


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